糖尿病内科

糖尿病内科

糖尿病という病気は、年々日本人の罹患率(病気にかかっている割合)が上昇している慢性的な病気で、まさに現代病の代表と言えます。命に関わる病気ですので、しっかりとした診断、管理、治療がとてもとても大切な病気です。
そして糖尿病で最も恐ろしいのはその障害、合併症です。ここでは糖尿病についての話だけでなく、合併症やその予防法、検査法についてもお話したいと思います。
糖尿病が心配、健康診断(検診)で糖尿の気があると言われた、など何か気になることがあれば早期に医療機関、かかりつけ医への外来受診をおすすめします。

糖尿病って何?

糖尿病イメージ

糖尿病とは、なんらかの原因で体の中の糖分(血糖値)が高くなりすぎている状態が続いてしまっている病気のことです。
人間は、糖分・糖質(炭水化物)を食べると、それがブドウ糖(グルコース)という小さな分子の状態まで消化され、吸収されます。ブドウ糖は血液を流れ、各細胞に運ばれ、細胞ではブドウ糖を原料としてエネルギー(ATP)を作り出します。そしてそのエネルギーは運動などによって使われていきます。
ですから糖分は、本来我々人間が生きていく上で必要不可欠なものです。からだの中の糖分(血糖値)が高くなると、膵臓というところからインスリンというホルモンが放出され、血糖値は正常まで低下します。そのため食事を取り過ぎても通常は血糖が上がりすぎることはありません。
インスリンというホルモンは、血糖を下げる唯一のホルモンです。膵臓のランゲルハウス島のβ細胞で作られています。
糖尿病は、このインスリンがうまく出ない、または有効活用できていないという理由で血糖値が上がりすぎている状態を指します。
正しい治療を行わないと、全身のあらゆる箇所に重大な病気を引き起こします。
糖尿には幾つかのパターンがあります。

◆1型糖尿病

インスリンを作る細胞がなんらかの原因で壊されたりするなどしてうまく働かず、血糖値が高い状態の方です。子供や若い方に多く見られるのがこの1型です。

◆2型糖尿病

インスリンの分泌が減ってきたり、働きが悪くなっている状態のかたで、中高年のかたに多く見られます。生活習慣病としての糖尿病はこの2型糖尿病を指すことが多く、9割くらいの糖尿のかたがこの2型と言われています。
日本人は欧米人に比べ、インスリン分泌が強くない人が多く、肥満体型でなくても糖尿病を発症する人が沢山います。皮下脂肪は多くないけれども内臓脂肪が増加する状態、いわゆるメタボリックシンドローム(症候群)です。
また、遺伝的な条件に加えて、食べ過ぎや飲み過ぎなどの生活習慣の乱れ、運動不足、ストレス、睡眠不足などが糖尿病の増悪(悪化)に拍車をかけてしまいます。

【症状】

糖尿病は軽症のうちは全く症状が現れません。そのために健康診断などでたまたま発見されることも珍しいことではありません。
血糖値の高い状態が続くと、口渇感(喉のかわき)、多尿(尿が多くなる)、体重が減る(糖尿が悪くなると、逆に体重が落ちてしまうのです)、疲れやすい、だるい、倦怠感などの症状が現れます。
また、糖尿病そのものの症状が出る前に、合併症としての症状で発見されることも多く見られます。
例えば心筋梗塞や脳梗塞の発作、閉塞性動脈硬化症と呼ばれる足の血管の詰まり、または目のかすみや視力低下(糖尿病による網膜症のため)などです。
糖尿病を良くすることは、合併症を防ぐ上でもとても大切です。

【合併症】

糖尿病の最も怖いところは、自覚症状なしに病気が進んでしまうということです。日頃のケアには3大合併症と呼ばれるものがあります。微小血管障害と呼ばれるもので、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、そして糖尿病性神経障害があります。また、動脈硬化が原因で起こる大血管障害もあります。心筋梗塞や脳梗塞、大動脈解離(大動脈がさけてしまう病気)などがそうです。

糖尿病性網膜症

糖尿病性網膜症イメージ

糖尿病性網膜症は、目の奥にある網膜というところにある細い血管が糖尿病のせいでダメージを受けてしまうことです。目のかすみや視力の低下などで見つかることもある一方、放っておくと失明してしまうこともあります。自覚症状が出現しにくいので、何も症状がなくても早期発見、予防のためにも半年に一回の定期受診をすることがとても大事です。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症イメージ

糖尿病性腎症とは、糖尿病により、腎臓にある細い動脈の流れが悪くなったり詰まったりすることで腎臓の機能が低下してしまう病気です。
腎臓は体内の老廃物を尿として体外に排出(出す)臓器です。腎臓の機能が落ちると、体のだるさや貧血が進行します。最終的に透析になってしまうこともあります。現代の透析患者の多くがこの糖尿病性腎症が原因と言われています。
腎臓機能が悪化しないよう、定期的な血液検査や尿検査での腎臓機能の把握は欠かせません。

糖尿病性神経障害

糖尿病性神経障害イメージ

糖尿病性神経障害は、高血糖により手足の神経が障害を受けてしまうものです。手先、足先の痺れ(しびれ)や痛みなどの感覚異常を自覚することが多いです。「靴下を一枚多く履いているような感じ」と表現する方も多く、感覚が鈍くなるというのもこの神経障害の特徴です。痛みが慢性化したり、感覚が鈍くなることが長く続くと、足の潰瘍などに進むこともあります。感覚が鈍いために、潰瘍に進んでも気づかないことが多いのです。さらに進行すると、下肢がくさってしまう(壊疽)、そして下肢の切断を選択せざるを得ない場合もあります。
定期的に足を見ること、何か変わったことがあれば早めに専門機関を受診し、検査、治療を受けることが大切です。

大血管障害

大血管障害イメージ

心臓や脳の血管、大動脈など大きな血管が狭くなったり詰まったり、さらには破けてしまったりする障害で、糖尿病の方が命を落とす最大の原因とも言われています。
狭心症や心筋梗塞などの心臓の血管に異常はないか?脳梗塞の前触れとして頚(けい)動脈という首の血管に動脈硬化はないか?閉塞性動脈硬化症といわれる足の血管の詰まりは出てきていないか?大動脈瘤と呼ばれる血管のこぶ(プラーク)ができていないか??
お気づきかもしれませんが、糖尿病の合併症予防には、循環器内科の病気を予防することがとても大切になります。
血液の検査で糖尿の数字が良いから、と満足していてはいけません。自分の糖尿の影響でどこかに動脈硬化が隠れていないか、その日頃の検査、日頃の定期チェックが命を脅かす心筋梗塞や脳卒中を防いでくれるのです。
糖尿がある方、糖尿の疑いがある方は、ぜひ循環器内科医による専門的な定期チェック、定期受診をお勧めします。

【検査】

検査の基本は血液検査と尿検査になります。過去1ヶ月から2ヶ月の血糖値の平均を表すHBA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という血液検査が一番標準の検査方法になります。HBA1c(ヘモグロビンエーワンシー)6.2%以下が正常と言われています。
糖尿病治療の目標値はその人によって変わってきます。若い人、高齢者、治療の強化が困難な人、などです。血糖の正常化を目指すならHBA1c 6.0%未満、合併症予防のためにはHBA1c 7.0%未満、治療強化が困難な場合はHBA1c 8.0%未満が血糖コントロール目標となります。
血糖値検査以外にも必要な検査が幾つかあります。糖尿病性腎症の程度を調べるのには血清クレアチニン値(Cre)、尿タンパク、尿アルブミン値があります。
糖尿病性網膜症の有無については眼科医の受診をお勧めします。
大血管障害(動脈硬化)検査としてはいくつか挙げられます。心臓の動脈硬化検査としては、心臓超音波(エコー)検査、運動負荷心電図。頭頸部の動脈硬化検査として頚(けい)動脈超音波(エコー)検査、下肢の動脈硬化検査として CAVI検査など挙げられます。これらは専門的な検査ですので、信頼できる循環器内科医への受診が必要です。
当クリニックはではこの動脈硬化検査を毎年数多くの患者様に実施しています。
2019年の実績は心臓超音波検査2,280名、頚動脈エコー検査1,273名の方に実施させていただいています。船橋市のクリニックではダントツの検査数を誇りますし、一般総合病院をも凌ぐ検査数です。正確な検査や診断、治療を受けるために病院の検査数を見ることは、その病院の信頼性や実績を測る上でとても有効と言えます。

運動イメージ

【治療法】

◆食事と運動

糖尿病の治療の基本は言うまでもなく食事療法と運動療法になります。食事療法のトレンドとして、現在カロリー制限食と糖質制限食のどちらが有効か、学会レベルでも議論の分かれている状況です。しかし、糖尿病の多くの方は大概の場合、やはり食べ過ぎです。間食を控える、ジュースをやめる、よる遅い時間には食べ過ぎない、など基本的なことを守ることが何よりも大事です。
運動療法としては、筋肉トレーニングと有酸素運動があります。もちろんたくさんやればやるほど効果的ですが、隙間(すきま)時間をみつけて5分だけでも体を使う、これだけでも有効です。時間がないから、忙しいからなどという理由で運動を避けている人がとても多いです。運動を続けることは糖尿病を予防するだけでなく、多くの病気を防いでくれます。まずは始めること、ごく短時間でもいいから始めること、そして習慣化すること、それこそが将来の糖尿病合併症を防ぎ、あなたを健康に導いてくれます。

◆薬物療法

現在、糖尿病治療に対する薬物は多くの種類があります。まず、大きく分けると内服薬と注射薬(インスリン製剤やGLP−1受容体作動薬)に分かれます。そして内服薬(飲み薬)の作用も更におおよそ3つに分けられます。
1)インスリンの抵抗性を改善し、効きを良くするもの
2)インスリンの分泌を促すもの
3)糖の吸収を防いだり、排泄を促すもの
それぞれに特徴があるため、個々の状況に合わせて調節していく必要があります。糖尿病の薬物療法に対する研究は、今までも実にたくさんされてきています。海外で実施されたUKPDS研究や日本の熊本スタディーでは、できるだけ早くから糖尿病を安定化させることで死亡率が低下したという報告があります。
しかし、一方で糖尿病の治療には低血糖というリスクがついて回ります。ACCORD試験という臨床研究では、血糖コントロールを厳しくしすぎると、低血糖により意識を失うなどのリスクが出るとの報告が出ています。現在では、ただ血糖を下げる、上げるだけでなく血糖の変動(ばらつき)を最小限にすることが重要視されてきています。
内服治療でも血糖のコントロールがうまくできない場合は、インスリン注射を使う必要があります。インスリン注射も1日一回で済むものから複数回打つもの、またはその療法を使う、などあります。効率的に血糖を下げるためにも、かかりつけの医師と良く相談することが大切です。

【予防法】

とにかく生活習慣の管理をしっかりとやることです。食べ過ぎや飲み過ぎ、糖分のとりすぎに気をつける、間食を控え、アルコールのとりすぎに注意、睡眠を良くとり、ストレスを溜めすぎないようにする。定期的な運動を欠かさないことや禁煙に努めることも大事です。
また、糖尿病の合併症を起こしていないか定期的な検査をかかさないことも重要です。
特に動脈硬化の合併症を予防することは極めて重要なことで、当院では全ての糖尿病患者のかたへ頚動脈エコー検査(首の動脈硬化)、運動負荷心電図(心臓の動脈硬化)、CAVI(足の動脈硬化)での全身の動脈硬化チェックをお勧めしています。